今から8~9年前のことです。当時はリーマンショック直後で、その影響を大きく受けた不動産業界は低迷期にありました。長らく不動産業界に身を置いてきた私は、理想と現実のギャップを強く感じるようになっていました。ひとくちに不動産業界と言っても幅広いのですが、私がおもに手掛けてきたのは賃貸不動産の分野で、オーナーさんと入居者さんを」つなぐ賃貸仲介、入居者さんからのクレーム対応や物件の補修などを行う賃貸管理、オーナーさんへの物件販売や物件仲介になります。そのころ、好景気であれば難なく機能していた、賃貸不動産をめぐるオーナーさんと入居者、不動産会社のあいだの連携がうまく働かなくなってきていたのです。賃貸仲介の目線で見ると、売上げの目標があるがためにどうしても売上げを重視した物件を優先的に紹介してしまう。賃貸管理の目線で見ると、空室が長期化すると当然にオーナーさんからお叱りを受けるので、早々に家賃を下げるか、仲介会社さんが決めやすいように募集費用を出してもらうことになる。物件販売や仲介の目線で見ると、コストがかさむ物件や家賃下落が著しい物件は紹介できなくなり、結果、オーナーさんは賃貸事業を発展させていくのが難しくなる。これは賃貸不動産に関するあらゆる仕事に携わってきたからこそ感じる矛盾であり、ゆがみでしたーー